販促のヒント

店頭販促研究セミナー/パネルディスカッションリポート
店頭販促活性化のヒント
〜ディスプレイコンテスト活用事例〜

 

少子高齢化や人口減少、長期停滞の経済など、厳しい状況が続いている中で、小売業はどのように売上を確保しているのだろうか。売るためのノウハウを蓄積し、売場づくりの技術を磨く。その積み重ねをディスプレイコンテストで発揮することで、高い評価を受けている2社の担当者にコンテスト活用事例を語ってもらった。 実施日時:2019年4月24日(水)


メーカーや担当営業と良好な 関係を築けるのがメリット!

――まず、それぞれの店舗を紹介してください


サンベルクス 五香店
店長
樋沼勝 様

樋沼 サンベルクスは、生鮮品に強みがあります。鮮度とおいしさ、価格の3つが揃っている「専門性追求スーパーマーケット(SM)」をコンセプトにしています。当店がある千葉県松戸市の五香地区は新興住宅地として開発が進んでおり、高齢者からファミリー層まで幅広い世帯が住む街です。近隣に当社の新店があるため、どちらかというと当店は、高齢者の比率が高くなっています。

瀧口 当店は阪神電鉄「大物駅」の高架下にあります。商圏は半径1kmぐらいです。ほぼ、徒歩か、自転車での来店です。駅を利用される方がお客様ですね。

――現在まで、どのような部署(業務)を担当されてきましたか?

樋沼 転職で現在の会社に来ました。以前の会社では、グロサリー、ドライグロサリーを担当して、SVに。その後、雑貨以外のグロサリー、酒類、日配などバイヤーを経験してから、店長になりました。その後、サンベルクスに転職。12年になりますが、何店舗かの店長をしています。今は、近隣店舗のフォローをするエリアリーダーも担当しています。

瀧口 私も転職組です。農産品のバイヤーをはじめ、酒類のバイヤーをしました。その後、現在の会社に入り、農産品を担当してから、グロサリー、デイリーの部門のマネージャーとなり、現在に至ります。

――コンテストに参加する流れやきっかけをお聞かせください。

樋沼 当社では、全社的にコンテストに参加するので、本部でバイヤーがメーカーの担当者さまと打ち合わせをします。そこで、コンテストに参加するかどうかが決まります。参加が決まると、各店にアナウンスがあり、各店が納入数などを連絡するという流れです。

瀧口 2年前から、全国的なメーカーさまのコンテストに参加するようになりました。実は、月1回開催される社内大陳コンテストがあるのですが、そこではあまり入賞することはできませんでした。そんな時、あるメーカーの担当者に「全国規模の大陳コンテストに出てみませんか」と誘われたことが、きっかけになりました。仕事の合間に、コンテスト用の売場をつくるのはきついので、水産部と事務の女性スタッフを巻き込んで、つくっています。もともと映画をつくりたかったので、映画の勉強ばかりしていて、その時に、絵を描いたり、小道具をつくったりしていたことから、POPは最初から、何気にできていましたね。

――コンテストに参加するメリットは、どういった点でしょうか?

樋沼 会社全体で、コンテストに参加しているので、メーカーさまとの良好な関係を築くことができます。また、このような機会があることで、店全体のモチベーションも高まります。陳列やPOPづくりの技術を磨くというか、スタッフの勉強の機会にもなると考えています。

瀧口 コンテストをチャンスとして、楽しい売場づくりを行なっています。お客さまに「すごいね」と言われることが励みになります。メリットとしては、メーカーの店舗担当者さまと信頼関係を築けることです。それと、いい商品なのに埋もれてしまっている商品をお客さまに紹介できる機会になることもメリットです。競合店が扱っていない商品を品揃えするということは、差別化になります。

売上アップや落ち込んだ カテゴリーの底上げにも活用

――コンテストの参加基準や、取り組みやすい商品・取り組みにくい商品についてお聞かせください。


マックスバリュエクスプレス大物店
グロサリー NF部 マネージャー
瀧口真嗣 様

瀧口 取り組みにくいのは、デイリーカテゴリーの商品ですね。商品が積みにくいですから。逆に、そこに勝機はあるかもしれません。当店は狭いので、大スペースのボリューム陳列というパワープレーができる大手企業とは、勝負になりません。デイリーならアイデアでなんとかできそうですし、大手さんも、それほど取り組んでいないようなので、検討の価値はあると思います。

樋沼 やはり、量販向きの積みやすい飲料や、カップ麺などのドライカテゴリーの商品は、陳列の工夫もしやすく、形にもなりやすいので取り組みやすいです。

――商圏内の顧客を意識したセグメンテーションについてはいかがですか。

樋沼 当店は、高齢者が多いので、健康をメインにした体にいいという商品、そして、マグロのトロなど、いいものを購入する方も多いので、少量で高品質なものは提案できます。また、店の隣に幼稚園があるので、お迎え帰りに、お子さま連れのお母さんが来店します。子供が好きそうな、目を引く商品の品揃えやPOPづくりは意識しています。

瀧口 当店も近くに幼稚園があるので、お子さまの気を引く戦略は行っています。コンテストでも採用している立体のオブジェやキャラクターをつくってディスプレイすると、お子さまの反応はいいというか、高まりますね。お母さんを売場に引っ張ってきます。そして、子どもに負けて、商品を購入していただける光景をたくさん見ています。

――POPや売場づくりの際に意識していることはありますか?

瀧口 いちばんは、お客さまをどこに連れて行こうかということを考えます。仮想の旅のようなことです。そこから発想がはじまります。ピザだったらイタリアへというものや、企業や商品イメージから発想して、場所を選定しています。リリース資料やホームページ(HP)などで、しっかりと調べています。

――ちなみに日本酒のメーカー大関の売場で採用している「私がかうなら〜」というフレーズは?

瀧口 大関のCMで使用していた「横綱は強いようでも どんづまり 私がかうなら のびる大関」というフレーズですね。大関さんのHPにもあります。「なぜ、横綱ではなく大関なのか」が、お客さまに伝わり、「だから大関」と納得することで、ブランドイメージというか、商品への親近感もアップすると思います。

――樋沼さんも、大塚製薬の売場でポカリスエットマンなどユニークなPOPをつくられていますね。

樋沼 私も、HPや資料をしっかり見て、企業や商品のイメージと特徴を確認することを、まず行います。そこで、どこにフォーカスするかを決めます。次に、その部分を目立たせるためのアイデアを考えます。売場が目立たないと、何にもなりませんから。その結果が、オリジナルのポカリスエットマンになりました。

――お客さまに注目度の高い売場をつくられていますが、売上はいかがですか?

樋沼 陳列場所や売場の出来具合にもよりますが、大陳を実施するとだいたい200%〜300%アップは当たり前です。商品やタイミングによっては10倍〜20倍も売れることもあります。

瀧口 10倍〜20倍の売上は確保できるのですが、店全体で落ち込んでいるところの活性化対策として大陳を組むので、売上の底上げができればという考えです。私は食品の担当なのですが、部門の垣根を越えて、店全体の大陳売場づくりを行っています。

――大陳ですので商品量は多くなりますが、それを売り切るために何か工夫はありますか?

瀧口 ほとんど売れてしまいますね。しかも、ほぼ定価販売です。在庫を抱えることや安売りで処分することはないです。

樋沼 当店も、ほとんど売り切れてしまいます。大陳は、面で大きくアピールできるので、お客さまの反応がいいです。そのためには、こまめな手直しがポイントになります。商品が減っても量感を失わないようにするなど、購入意欲が萎えないようすることで、きれいに売れていきます。

社内での売場づくりの技術や ノウハウの伝承が今後の課題

――私どもの大陳コンテストに参加していただいていますが、その他に、このような店頭販促があればとお考えのものはあります?

樋沼 同じカテゴリー商品で、2つのメーカーの共同で「〇〇VS〇〇」企画というのがあればと思います。1社での「VS企画」はありますが、それをメーカー比較にすると、お客さまの関心は、もっと高まると思います。あとは、生鮮ですね。当社は生鮮を押しているスーパーマーケットなので、生鮮との関連販売を促進できる企画が欲しいです。

瀧口 関連販売はスーパーマーケットには重要です。今後、期待しているのが動画で参加する販促企画。実際に、直近で参加させていただいたコンテストもあります。また、あるメーカーで飲料の香りが試せるPOPがありましたが、芳香剤だけでなく、食品・飲料では香りの訴求もあると思います。

――メーカー支給の販促ツールについて、ご要望はありますか?

樋沼 ダンボールをカットして、そのまま陳列することが多いのですが、そのダンボールに貼ることができる装飾用の帯のようなテープがあるといいですね。段ボールに窓を開けた周りがそっけない時が多いので、その対策用になると思います。

――若いスタッフやパートさんに、陳列技術を伝えるのがなかなか難しい状況になっているとお聞きしていますが、陳列のマニュアルなどは必要ですか?

樋沼 なかなか陳列を担当する機会がないこともあるので、そのようなマニュアルがあるといいですね。メーカーさんからの「当社の商品は、このように陳列するといいですよ」というような陳列に関するわかりやすいマニュアルがあると助かります。

瀧口 私は、オリジナルにこだわっているので、必要としていません。しかし、発想のヒントとしてや、経験の少ない若いスタッフ用としては、必要かもしれませんね。

――本日は、ありがとうございました。