店頭販促の現状とトレンドとは? そして、店頭活性化の活用事例としてのディスプレイコンテストはどういう位置づけなのか? POPの学校校長の山口氏の講演と、グランプリ受賞実績がある店長によるパネルディスカッションの「店頭販促セミナー」から、成功のヒントとなる考え方や活用事例などについて紹介する。
実施日時:2018年4月24日(火)
第1部<講演>
「POPから見る店頭販促のトレンド」
POPの学校校長 (株)山口 茂デザイン事務所 代表取締役 山口茂氏
時代とともに変遷するPOP いま、「インスタPOP」の時代へ
POPには「10年周期説」があります。1985年ごろは、「手書きのPOP時代」といわれ、どのように、早くきれいに書くかという書き方が重視されていました。POPの研修というと、このような文字の書き方が中心になっていた時代です。1995年になると大きな転換期を迎えます。それは「パソコンPOPの時代」。ビジネスソフトやPOP用のアプリケーションが登場したことが大きな要因です。そして、2005年になると、手書きでもパソコンでもどちらでもいいという「手書き・パソコンPOP併用時代」へ。これは、各企業のイメージなどに合っている方を採用しようという意識が働き出した結果といえます。それから10年後の2015年からは、「インスタPOP時代」になったといえるでしょう。「インスタ映え」が、最近のキーワードとなっていることからも、「インスタ映えするPOP」「インスタ映えする売場」がトレンドです。
今は、AIDMA(アイドマ)の法則に「S」がつく時代。そう、シェアですね。SNSの活用が活発になっている中で、見栄えを重視した消費者が「シェア」をしたいと思えるメニュー提案や生活シーンを提案する売場づくりが高い効果を生む時代になっているのです。
モノ消費からコト消費へ! モノを売らずに、コトを売る。
商品やサービスの価格や機能、特徴に価値を見出して、それを売る。それが「モノ」といわれるもの。一方、商品やサービスを通じて消費者にとっての体験や思い出などのメリットを売るのが「コト」です。これは、どちらがいいのかということはありません。しかし現在は、モノをコトに変換してアピールすることで、売れる時代だと感じています。
現代は、モノの情報が溢れていることで、商品を選びづらくなっているのではないでしょうか。人の感情を動かすのは、「モノの情報ではなく、コト」。体験や思い出が消費者のメリットとなり、それを想像できることで価値を生み出しているのです。そのような時代になっていると考えられます。
その1つの例が、日産自動車の「セレナ」のプロモーションです。「モノより思い出」という名作キャッチコピーといえる訴求とその世界観。走りの性能や燃費ではなく、子どもと一緒に、家族とのたくさんの体験や思い出づくりをできる「コト」をアピールした結果、共感を得ることができ、人気車種になったといえます。食品であれば、食べ方やその商品を使うことで、いっそう広がる楽しい食シーンという「コト」の訴求になります。また、「インスタPOP」として、SNSにシェアしたくなるような写真付きPOPで、付加価値やオリジナリティーを訴求するという、拡散したくなる気持ちを捉えることが重視されています。「買いたいと思うような」仕掛けがPOPにも必要です。
コトPOPをつくるコツは 自分の体験や調べた実感
メーカーからの情報を、そのままPOPにしても、消費者には響きません。だから、「POPは自分の言葉で書く」。そのためには、「自分で体験する」「自分で調べる」ことが、必須です。実感したことを表現することで、自分の言葉で、しっかりと商品のメリットを伝えることができるのです。例えば、精肉コーナーの「豚小間」には、よく「どんな料理にも合う」とPOPに書かれていますが、これでは響かない。自分で気に入っているおいしいと思う豚小間メニューを具体的に訴求した方が、共感を得ることができ、売れる可能性が高まります。あらゆる視点から商品を見て、具体的なメリットをわかりやすく提案することがPOPのコツです。
消費者は、比較して買う。だからこそ、重要なのは直前情報となるPOP。消費者は「お徳感で買っている」「安心感で買っている」「ワクワク感で買っている」ので、POPは消費者のメリットとなる「価値がわかるコト」「役に立つコト」「ワクワクするコト」の「3つのコト」を商品のそばで、訴求すること。それが、POPの成功へのコツといえます。
POPづくりは、ついついブランド寄りになりがちになります。そこで1つの提案ですが、主婦であるパートさんに実感のあるPOPをつくってもらうのも1つの手といえます。
いまいちど、店頭のPOPを見直してみましょう。そして、コトPOPがあるか、インスタ映えがあるか、自分の言葉のように実感が込められているかなど再確認することで、効果的なPOPづくりへと、ワンランクアップしてみてはいかがでしょうか。
第2部<パネルディスカッション>
「店頭販促活性化のヒント~ディスプレイコンテスト活用事例」
株式会社 ウジエスーパー 築館店 上席店長 新妻康憲氏 株式会社 マミーマート 川口安行店 店長 大石基司氏
店舗にとって重要な施策である ディスプレイコンテスト
――本日はディスプレイコンテストへの取り組みについて語っていただきますが、はじめにどのようなお店を運営されているか教えてください。
大石 私の店舗は埼玉県の川口市にありますが、店舗自体はかなり古く、年数が経っています。また、客層はシニア層が多いです。そのため、ディスプレイコンテストなどを活用して、売場の活性化を行っています。また、ディスプレイの効果か、ファミリー層の顧客も増え、いまではシニアとファミリーが半々の割合になっています。
新妻 私が店長を務めるのは、宮城県の栗原市にある店舗です。地方ですので、人口減少などもあり、シニア層が大半を占めています。だからといって、代わり映えのしない売場では顧客離れが起きてしまいますので、商品提案やメニュー提案など、パートスタッフを巻き込んで行なっています。一昨年オープンした新店ということもあり、顧客獲得策としてディスプレイコンテストなどの施策も積極的に展開しています。
――ディスプレイコンテストには、どのようなきっかけで参加されるようになったのか教えてください。
大石 前任の栗橋店のときに、亀田製菓さんから「コンテストに参加しませんか」と誘っていただいたことがきっかけです。実施してみると、売上がアップし、売場の活性化になることを実感しました。その後、さまざまな商品で取り組みました。栗橋店は600坪の店だったので、大陳用の催事スペースが取れたのですが、いまの川口安行店は、広さや店舗レイアウトの関係から、大陳は難しいと諦めていました。しかし、なにか施策を行わないと競合店との差別化ができないということで、なんとかスペースをつくって、実施するようにしました。もう、14~15回実施しており、グランプリもいただいております。
新妻 4~5年前に、中里店の店長時代に酒のコンテストを実施したのが最初です。各メーカーの担当者さんは、店長は素通りで、売場担当者に話を持っていくのですが、たまたま売場担当者が不在で、私が話を聞く機会がありました。そして、このようなコンテントがあるということを知り、私自身も関わりながら参加していました。ちょうど面白くなってきたときに、現在の築館店に異動となってしまいました。しかし、メーカーの担当者さんとは、知り合いになっていたので、築館店でもコンテストに参加しています。売場づくりは、やればやるほど、私自身が面白くなってきており、お客様にも喜ばれる施策だと考えています。
ディスプレイコンテストは 商品を育てる場となっている
――大陳のメリットというと、どのような点でしょうか。
大石 当社では、いま「M3プロジェクト」というのを展開しています。店だけが得をするのではなく、メーカーさんとお客様と店の3者みんなが幸せになろうという活動を行なっています。大陳を行うと、お客様に喜ばれてメリットもあり、店も売上が上がる。そして、メーカーさんも商品が売れて、ブランドイメージもアップする。これが、当社が推進している「M3プロジェクト」とぴったり合致します。今後も、積極的に取り組んでいきたい施策です。新妻店長の話のように、店長は忙しいので、メーカーさんの担当者は声をかけにくいのかもしれませんが、いろいろと情報交換もしたいので、ぜひ、声をかけていただけるようお願いします。
当社は、本部対応というより、各店の商圏特性を生かし、売場に反映することを認められているので、個店対応が可能です。顧客のニーズに合うもので商品提案として面白ければ、実施していきたいと考えています。
新妻 当社も、本部からの指示での参加もありますが、私自身が参加したいと考えたときは、自ら本部に問い合わせをしています。大陳を実施した商品は、大体売れるようになり、定番に戻した後も同じような売れ行きを維持します。競合他店も商品はほとんど同じものを扱っているのですが、見せ方や訴求方法を考えてアピールすることで、ファンになってくれます。店も、商品も、そのどちらに対してもファンになってくれるのです。「この前、積んでいたビールは、これだよね」とか、「積んでいたから買ってみたけど、気に入ったから使い続けている」とお客様に声をかけられることが実際に多くあります。大陳の印象が強く残っており、当店での購買につながっていると実感しています。
消費者に伝えることができる 「コト」につながる情報提供を
――ディスプレイコンテストに参加する際に、得意・苦手というカテゴリーは、ありますか。
大石 大陳用に、チルドの平台を置くようなスペースを確保できないので、チルド商品は難しいですね。東洋水産さんの夏の焼そばフェアは、日配用の平台冷ケースを移動して実施したことはありますが、定番商品を陳列できなくなるなどの不都合が生じます。ヨーグルトなどもチャレンジしたいのですが、断念しています。
新妻 得意・不得意は、ほとんどないのですが、商圏内の消費者に受け入れられる商品かどうかで判断しています。賞味期間の短いものも、売り切れるかどうかの問題があり、控える傾向にあります。都会とは違うので、エスニック系の食品などは、敬遠します。
冷凍やチルドは、やはり、平台ケースの移動が大変です。リーチインでの陳列で、床面積に誘導シールなどを貼って、実施したりはしています。
――POPの作成は、どのようにしていますか。
新妻 パソコンと普通のプリンターはありますが、手書きが中心です。イラストが得意な人や文字が得意な人、装飾デザインのセンスがある人など、それぞれのスタッフの得意技を生かして、オリジナルPOPを作成しています。メーカーさんからの支給POPだけでは、コミュニケーションが十分には取れないと考えています。
大石 私に設備などの話を振らないでください(笑)。普通のパソコンとプリンターです。店舗の古さと同様に、POPも手作り感満載のオリジナルです。不便なことがあれば、知恵が生まれます。
――販促物や商品情報で欲しいものはどんなものですか。
新妻 知らぬ間に販促物が送られていて、使わずじまいということが多々あります。メーカーの方が、一生懸命開発された商品ですので、販促物よりも開発秘話や商品の良さ、メリットを教えてもらえればと思います。消費者と接点のある店が、それらの情報をしっかりと発信できれば売れる商品になると思います。新商品を売るためには、販促物よりも、情報提供でしょうか。その上で、欲しい販促物があれば、自分から依頼をします。
大石 新商品や大陳情報は、直接いただきたいと思います。バイヤーにとって、新発売はチャレンジになるのですが、「新発売」は消費者にとっては、購買意欲をかきたてるのです。
――最後になりますが、メーカーさんへのご要望などがありましたら、お話しください。
新妻 新商品情報や大陳情報は、直接、店長へもお伝えいただくとよいかもしれません。忙しくて、部署担当者に任せている場合もありますが、実施する・しないの裁量を持っている店長も多いと思います。本部との交渉とともに、店長へ知らせていただけると、新たな展開が生まれるかもしれません。
大石 東日本大震災や熊本地震の時に、ボランティアを体験しているのですが、その時、小売店は商品がないと何もできないということと、地域の方々の重要なライフラインであることを痛感しました。商品あっての小売業ですので、ぜひ、今後もいい商品を提供してください。
――本日は、ありがとうございました。
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