販促のヒント

ダイヤモンド・チェーンストア9月15日号
商品部長に聞く新商品トレンド①
フレッセイ グロサリー部部長 清水真由美氏

「健康」「簡便・即食」提案に注力、単品大量陳列で売上を創出する

アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長:以下、アクシアル)傘下のフレッセイ(群馬県/植木威行社長)は、グループで取り組む「成功事例共有システム」を徹底することで販売力に磨きをかけている。秋・冬には「健康」「簡便・即食」の品揃えの拡充や、ハレの日向けの商品政策(MD)の強化などにより、さらなる売上拡大をめざす。 聞き手・構成=大宮弓絵(本誌)

成功事例を全店で共有、日本一の売上を達成

─2019年3月期、これまでを振り返ってグロサリー部門の状況はいかがでしょうか。


フレッセイ グロサリー部部長
清水真由美氏

清水 グロサリー部門の既存店売上高は、前年同期比で2.3%増(18年4月~8月末)でした。とくに、コメ、洋日配、和日配が好調に推移しました。カテゴリー別では、飲料、アイスクリーム、漬物、納豆、のり、水産缶詰、酢、和総菜サラダ、酎ハイ類、銘柄米が好調でした。猛暑による後押しもあり、夏場によく動く商品が軒並み売上を伸ばしました。

─上期で効果をあげた施策はありますか。

清水 単品の売り込み強化です。今年6月から、新たに「日本一企画」という取り組みを開始しました。CGCグループが定める月間重点商品のなかから、販売強化商品を選定し、CGCグループで日本一の売上高をめざすというものです。売り込むのは主にCGCグループのプライベートブランド(PB)商品で、6月は特定保健用食品の「おさかなソーセージ」、7月は「梅干」の売上高で日本一になることができました。

「梅干」を売り込む商品に選定したのは、前年と比較して売上高が伸長傾向にあったからです。おそらく熱中症対策商品として購入する人が増加したのでしょう。平台エンドで訴求したところ、「梅干」の7月の売上数量が前年同月比で3万2000個、売上高で同1100万円増加しました。このように購買データをよく観察し“隠れたヒット商品”を見過ごさないことも、売上を伸ばすために重要なポイントです。

─日本一の売上高はなかなか実現できることではありません。全店を通じて単品販売を徹底できた理由は何ですか。

清水 フレッセイでは、アクシアルグループの全体で取り組んでいる「成功事例共有システム」を導入しています。これを活用して、個別店舗での売場展開の成功事例を吸い上げて、各店舗にフィードバックし、水平展開していきました。それが奏功したのだと思います。

フレッセイでは、アクシアルグループ全体で取り組んでいる「成功事例共有システム」を導入。効果的な事例を全店で共有、展開できるようにしている

─「成功事例共有システム」について、もう少し詳しく教えてください。

清水 各店舗で成果を上げた取り組みを、写真や販売実績データとともに社内のイントラネット上に登録し、全社的に共有する仕組みです。各店舗から挙がってきた事例に対して、エリアマネージャーとバイヤーが4段階で評価しコメントします。このシステムにより、効果的な事例を全店で共有、展開できるとともに、自らの取り組みが評価されることで、従業員のモチベーションも高められます。13年に導入した当初は登録件数もわずかなものでしたが、共有化が進むにつれ徐々に増え、今ではグロサリー部門だけで月に800件ほどの事例が挙がってくるようになりました。

このシステムのよさは、パート・アルバイトを含めた全従業員が活用できるように、簡単でわかりやすい仕組みにしているところです。店舗のパソコンでシステムにアクセスし、部門やカテゴリー、週を選ぶと、効果を上げた事例が、投稿された画像とともに確認できます。メールや書面での指示よりも、わかりやすく、従業員が実行に移しやすいと思います。

マスコミ効果を逃さず売場でトレンドを発信

─19年3月期の重点施策として①「健康」「簡便・即食」の品揃えの拡充、②「低糖質・高タンパク質」のMDの確立、③「モノ日」の深化を掲げています。


19年3月期の重点施策の1つとして「健康」「簡便・即食」の品揃えを拡充する

清水 ①では、消費者ニーズが伸長している商品として「健康」「簡便・即食」商品を充実させます。とくに「健康」関連の商品については、消費者の関心度が高いことから、TVや雑誌などのマスコミで取り上げられることが多くなっています。とりわけ人気の情報番組で紹介されると、関連商品が一気に動くので、放送前に商品をしっかり確保し、タイミングを逃さず品揃えや売場づくりを行います。

─②では「健康」のなかでも「低糖質・高タンパク質」商品のMDの確立を進めています。具体的にどのような取り組みをされていますか。

清水 たとえば「高タンパク質」の提案として、消費者からの注目が集まる大豆関連商品を拡充しています。納豆や豆乳といった定番商品だけでなく「豆乳ヨーグルト」や「チーズ風豆腐」、話題となっているインドネシア発祥の大豆の発酵食品「テンペ」なども品揃えします。このように、消費トレンドをいち早く売場に取り入れてお客さまに情報を発信できるような売場づくりをめざしています。

─重点施策③の「モノ日」の深化というのはどのような取り組みですか。

清水 当社ではいわゆる「ハレの日」のことを「モノ日」と呼んでいます。今年は会社全体として、季節の歳時や行事に合わせて「モノ日」MDを強化する方針を掲げています。

具体的には歳時や行事に合わせて、商品部がMDを組み、家庭の食卓が季節によってきちんと変わるような提案をします。

─秋・冬にはどのような「モノ日」MDを行う予定ですか。

清水 10月末のハロウィン、11月のボジョレー・ヌーボーの解禁、12月のクリスマスは「洋風MD」、正月に向けたおせちの販売は「和風MD」の集大成と位置づけ、売場での提案を強化します。少し早めに売場づくりを行い、売れるピークが過ぎたらすぐに別の売場に切り替える「早仕掛け、早仕舞い」を徹底していきます。

─そのために取り組まれていることがありますか。


「エンド計画書」で指示する売場事例。活用を進めることで、全店舗で「モノ日」を打ち出せる売場づくりや単品大量陳列を徹底する

清水 数年前から「エンド計画書」を作成して、全店舗に配布しています。これは、ゴンドラエンドで訴求する商品や、陳列のレイアウト、展開期間などを具体的に指示するものです。この計画書の活用を進めることで、全店舗でモノ日を打ち出せる売場づくりを実践できるようにしていきます。

売場づくりで徹底するのは、単品大量陳列です。かつてはメニュー提案を目的に、ゴンドラエンドで複数の商品を集積していました。しかし、同じアクシアルグループの原信(新潟県/原和彦社長)やナルス(新潟県/森山仁社長)が力を注ぐ単品大量陳列を導入したところ、人手もかからず効果的なことがわかりました。迫力ある大量陳列を、複数箇所で展開し、視認性をあげることが基本だと思います。

─売場づくりにおいて取引先メーカーと連携していることはありますか。


人気商品であるサラダチキンの購買データを分析し、同時購入率が高かった商品のメーカーにポイント販促企画を提案。サラダチキンと合わせて購入するとポイントを提供するというもので併売率が5倍以上伸長した

清水 ポイントを活用した販促企画を積極的に取引先メーカーさまに提案しています。たとえば、「健康」「簡便・即食」を訴求できる重点商品の1つに、CGCグループのPB「適量適価」シリーズの「サラダチキン」があり、よく売れています。その購買データを分析し、サラダチキンとの同時購入率が高かった商品の取引先メーカーさまにご協力いただき、サラダチキンとともにその商品を購入されたお客さまに10~20ポイントほどをプレゼントするという企画を実施しています。これまでにドレッシング、調味料、チーズ、豆水煮、つゆ、飲料などの商品を対象に実施し、企画前と比較して対象商品すべての併売率が5倍以上伸長する効果が得られました。

注目するポイントは「訴求力」「簡便性」

─秋・冬に販売を強化したいカテゴリーは何ですか。

清水 鍋つゆ、スープなどです。鍋つゆは、簡便ニーズが高まり調味料類が苦戦するなか、その汎用性の高さから売上が伸びているカテゴリーです。単身世帯の増加にともなう「個食」ニーズに対応した少量商品も増えています。今年の秋・冬は、あごだし、辛味系、ポン酢、オリジナル商品のすき焼きの割り下などをゴンドラエンドで訴求し販売を強化します。

スープも市場が拡大している商品です。具材感のあるカップスープや、スープパスタ、レンジ対応可能な簡便商品などバリエーションが増えているので、売場で提案していきます。

─注目している秋・冬の新商品をカテゴリー別に教えていただけますか。

清水 調味料では、まずキッコーマンの「超生姜焼のたれ」。野菜と果実が総重量の50%以上という具材のたっぷり感と、ネーミングに訴求力があります。また、正田醤油の「冷凍ストック名人 タンドリーチキンの素」は、家庭ではなかなかできないタンドリーチキンを、鶏肉をたれに漬けて凍らせ、凍ったままフライパンで加熱するだけで食卓に出せるという点で、簡便性が打ち出せる商品です。

菓子では、森永製菓の「エモ〈ショコラ〉」に注目しています。「口に入れた瞬間にとろけ出し、しっとりゆっくり広がっていく」というこれまでにない食感が話題になりそうです。

デイリーでは、森永乳業の「クラフト バジルフレッシュモッツァレラ」。食べやすい一口タイプで、味付けタイプのモッツァレラはこれまでなかった商品です。冷凍食品では、日本製粉の「オーマイ 具の衝撃 海の幸クリーム」です。「衝撃」と打ち出すほど具材がたっぷり入っている冷凍パスタシリーズ。18年に販売開始したシリーズで話題となっており、新メニューの「海の幸クリーム」にも注目しています。

─今後の抱負を教えてください。

清水 上期の記録的な猛暑や豪雨など、異常気象が多発するようになり、商品の売れ行きがこれまで以上に読みにくくなっています。そうしたなかやはり重要なのは「観察・分析・判断」という基本を振り返ることです。週単位で売上高、粗利益、ロスを管理し対策を打ちます。これを実行するために、各バイヤーの売れる商品と売れない商品を見極める判断力を磨いていきたいと考えています。