はじめに、北海道胆振東部地震により犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災されました方々に心よりお見舞いを申し上げます。
2018年9月6日午前3時7分59秒、北海道胆振地方中東部を震源として発生した北海道胆振東部地震はマグニチュード(M)6.7、最大深度7を観測。 この地震によって、自然豊かな北の大地は大きく揺れ、多くの家屋が倒壊、犠牲者を出し、道民の心を不安に陥れた。
通常、弊社のレシピサイトに訪れるユーザーは「今日のごはんは何を作ろうか」「今ある食材で何が作れるのか」といった、日々の調理課題を解決するために、レシピ名や食材名で検索をかけ、「今作りたい、必要なレシピ」を296万レシピの中から探し出している。しかし、天災などが発生すると、その食動態が大きく変わってしまうから驚きだ。 そこで本稿では、クックパッド(株)が提供する食の検索データ分析サービス「たべみる」より、被災地北海道のユーザー(震央を含む、比較的強震度(5弱目安)であった半径75km圏内エリア)に絞り、震災前の9月3日から震災後9月9日までの検索態度の変化を確認し、震災時に身に付けるべき調理知識について考える。
地震当日の2大トピック 検索頻度の大幅な減少と「ご飯の炊き方」ニーズの急上昇
被災地の被害状況や被災者が今何を求めているのか、といった震災に関する主な情報収集先としてはSNS・メディアからが一般的で、多くの情報を仕入れることが可能だ。 しかし、震災直後の情報については信憑性に欠けるものもあり、そのまま鵜呑みにするのは危険な情報も紛れ込んでいる。 対して、クックパッドの食の検索データ分析サービス「たべみる」では、前日までのデータで、検索者自らの手により検索した結果を抽出することが可能であるため、検索頻度の増減や検索されるキーワードを分析することによって、「直近での食卓周りの環境変化や被災者の食ニーズ」を鮮度の高い状態で把握することが可能だ。
その「たべみる」を使って、震災当日の検索頻度について確認してみよう。3日前の検索頻度を100とすると、地震発生当日には、-73.0%と大幅に減少してしまった。被災した当日となると、レシピを検索する行動よりも、食料確保(購入)の方に注意が働くことから、調理に対する優先順位が下がってしまった、と推測する。(図1参照)
また、検索キーワードにも震災前と当日では大きな変化が現れた。比較するため、地震が起こる前(9月3日~5日)の検索頻度の多かったキーワードランキングを見てみる。(図2参照) 1位~10位までは、大量消費食材である「なす」「キャベツ」「豚」「鶏胸肉」があがっている。クックパッドの検索状況としては、普段通りのランキング内容である。 しかし、震災当日の9月6日に目を向けてみると、常に1位であった「簡単」が8位に転落し、1位から5位までを「ごはんの炊き方」に関するキーワードが占拠している。
この震災前日から当日までの、検索キーワードランキングの変化については、北海道全域の大規模な停電が影響していると考えられる。炊飯器の使用が制限されてしまい、ガスの使用を余儀なくされたことから、「ごはん」「土鍋でご飯」「炊き方」といったキーワードが急上昇し、ガス利用の炊飯に切り替えたことが伺える。
電気復旧により、意外な食べ物が上位にランクイン
震災から2日後の検索態度には変化があるだろうか。9月8日の検索キーワードランキングを確認してみると、「パン」「ホットケーキミックス」がランクインしている。(図3参照)
震災前日・当日のランキングにはなかった、これらのキーワード上昇の要因の1つとして、電気の復旧が影響したと考えられる。それには、8日に11位、9日に14位であがっている「ホームベーカリー」が背景にあると考える。店頭に陳列する食料には限りがある中で、当社のSNSに寄せられたコメントによれば、小麦粉をはじめとした粉物は比較的手に入りやすい状況にあったとのことから、必然的にパンをつくるニーズが生じた可能性がある。
北海道胆振東部地震から学ぶ調理知識
本稿では、被災地の調理者に絞り検索態度の変化を見てきた。検索されたキーワードからは、ライフラインが一時ストップしたことにより、普段の調理機能が制限され、今手元にある食材を工夫して調理しなければならなくなった被災者の状況が読み取れた。 私達はこの教訓を活かし、ライフライン停止時でも出来る調理スキルや知識を日頃から身に付け、備蓄食材への関心を強める必要がある。 天災の多い日本だからこそ、クックパッドはじめ、食に携わる関係者一丸となって「食への備え」を強化していきたい。
【たべみる】クックパッド株式会社が提供する、食の検索データ分析サービス。